居心地のよい住まい

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2014年 03月 19日

「聴竹居」のパッシブデザイン(夏涼しく冬暖かい住まい)

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南側から見る全景/切妻屋根にある通風窓

この住宅は京都の大山崎町に建っています。あの天王山の麓です。
上の写真は昨年の紅葉がきれいな時期に訪問した時のものです。(残念ながら内部の写真はありません)
近くにはウイスキー「山崎」をつくっているサントリーの工場があり、千利休の茶室「待庵」も近所です。
建てられたのは昭和3年で、今から86年も前になります。
設計者は藤井厚二という方でその当時は京都大学の教授でした。
今でこそパッシブデザインという考え方で住宅がつくられだしましたが、驚くことに当時この建物で考えられていたのです。

※パッシブデザインというのは機械装置に頼らずに建物の構造や材料の工夫によって熱や空気の流れを制御し快適な室内環境をつくり出すということです。要は建物の工夫で夏涼しく冬暖かく生活するということ。

どのようにつくられているかといいますと、

まずこの建物は夏を旨として考えられています。
建物の南側には大きな樹木が植えられ、涼しい木陰をつくってくれます。
冬には葉が落ちて陽を室内深くまで導いてくれます。
建物には深い軒が引き出され日差しをコントロールしてくれています。

建物プランは南北に長くなっているようですが少し方位が振られていて建物の一番長い対角線が真南に向くように配置されています。
これで日当りや通風を取り入れやすくしているようです。
引き違い窓が多用され、南側の縁側等には地窓という床に接するように開口が取られ低い位置からも有効に風を取り込むようになっています。

建物内部は開放的なプランになっていますが、引戸で閉じて使うことが出来るようになっており夏冬両方のしつらえになっています。
その引戸の上には必ず欄間が設置されていて引戸を閉めて使いたいときでも空気の流れが途切れないように考えられています。
天井には暖かい空気が排気されるように排気口が室内のところどころに設けられています。(開閉可能)
屋根裏に行ったその暖かい空気は切妻屋根の南北両側にある通風窓により屋外に排出されます。
この通風窓は冬には閉じられるそうです。

そして床下です。
基礎部分のところどころ特に南側ですが、床下通気窓が開けられていて床下に大量の通風が取り込まれます。
この床下、一部が通気筒により屋根裏とつながっています。
効率的に空気の入れ替え、排気ができるように考えられているのです。

この地域は夏の卓越風は西側から吹くそうです。
建物はまわりよりも少し高台に位置しているのですが、西側の斜面の木陰に風の取入れ口が空いています。
ここで風を取り込み、地中に埋め込まれた導気筒を通って居室の小上がり床下から室内に送り込まれます。
取り入れられた空気は盛夏でもたいへんに冷たい風であったそうで、室内を涼しく快適にしてくれたようです。

設計者はこの土地で実験に実験を重ねて気候風土を研究しており、この建物で実に自邸5棟目(すべて実験住宅)なのです。
ですのでその他にもありとあらゆる工夫がたくさんあります。
この建物がつくられた時代には昔ながらの民家が数多くあったためにこの考え方がスタンダードにならなかったと思いますが、現在の亜熱帯気候の日本を考えるとなるべくエネルギーを使わない暮らしが必須になりつつあります。
その意味ではこのようなパッシブデザインの考え方がこれからの住まいにはたいへん参考になってくると確信します。

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縁側の窓のデザイン
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縁側の窓のデザイン(一番下が地窓)
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南側の引き違い窓と床下通気窓
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三つ並んだ床下通気窓
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風の取り入れ口のある西側斜面


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玄関まわり(屋根裏の通風窓)


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by matu-mitu | 2014-03-19 18:22 | 温熱環境 | Trackback | Comments(0)
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